◆ 劇団空中サーカスVol.2 『シラノ・ド・ベルジュラック』 ◆
座長の日記より
[ 9月某日 ]
プリントゴッコの音が物悲しく隣室から響いてくる。
まるで「鶴の恩返し」で、つうが機を織る音のようだ。
何度も逃亡を図った末、とうとう観念して缶詰生活(軟禁状態とも言う)に入った作者は、そんなことを考えている。
あの音は、「今度逃げやがったら承知しねえぞ〜」という、怨念の音である。
おそろしい。
[ 10月某日 ]
深夜12時過ぎ、三田市西山に建つ何の変哲もない白いアパートの一室から、悲痛な雄叫びがあがった。
「間違えた〜!!!」
Nは裁縫の才能がない。
[ 10月某日 ]
Sは台風カレーに執着していた。
稽古には間に合わなかったが台風カレーには間に合った。
食った。
[ 11月某日 ]
最近英会話を習い始めたMは、21世紀に向けて国際人を目指している。
職場でも同僚デブラ(ニュージーランド人)の通訳をすすんで務めたりもするが、はっきり言って通じていない。
ある日、デブラが友情のあかしに「彼氏と特別な日に飲んでね(はあと)」と言ってシャンペンをくれた。
しかしそのシャンペンは、シラノと乳母の真夜中の酒盛りに消えていったのであった。
[ 戻る ]