◆ 劇団空中サーカスVol.1 『グリーン・サム』 ◆


座長の日記より

[ 1996. 9. 22. ]
 役者Aは男前である。椅子に座って足を組み、台本をにらんでいる姿は、並の男よりも男らしくりりしい。 そんなAを見る演出Nの胸中は複雑だった。 自分の選択に誤りがあるはずがない、唯我独尊のNはそう思いながらも、一抹の不安を拭い得なかった。

[ 1996. 9. 25. ]
 Mは、この一週間というもの不気味な腰痛に悩まされていた。 腰とも腹ともつかぬ右側の内奥がシクシク痛む。 保健室の先生に聞くと、どうもそこは腎臓のある辺りらしい。 不吉な予感がした。
「助からないかもしれない……」
先月引っ越したばかりのアパートの敷金は80万だった。 まだモトを取っていない。 実家には愛犬ゴンを置き去りにしている。 幼い甥は、Mの顔を知らずに大きくなるだろう。 部屋は人格を疑われる位散らかっており、片付けないうちは……しがらみが多すぎて、死ぬに死ねない。
 死ぬために身辺整理をするよりはマシだ。 Mはしぶしぶ病院に行った。 原因は分からなかったものの、痛みは最近治まってきている。 たぶん長生きするでしょう。

[ 1996. 9. 28. ]
 夕方5時に稽古を終えて、近所のダ○エーに行きました。 100円を入れたら使えるカートや、天井までそびえたつ高い棚、滅多に見ることのない豊富な品揃えに興奮して買いまくりました。 いなかもんです。 でもそんな大きな店で、月見団子を手に入れることができなかったのが、ちょっと悲しかったです。 特にEは、昼間急性胃腸炎でウンウン言っていたくせに団子は別と見えて、最後まで執着しておりました。


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