◆ オリジナル台本 『アステカの少女』 ◆

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題名 アステカの少女
作者 山本真紀
キャスト 4人
上演時間 80分
あらすじ 雨の神の神殿に仕える少女・蜂鳥。全ての祖先の記憶を受け継ぐ彼女は、自分の生まれる前の遠い昔のできごとも今のことのように語る能力を持っていた。
おりしも、東の海の向こうから、白い肌の人々が訪れようとしていた。揺れ動く帝国の首脳陣。はたして、予言された滅亡をくいとめることはできるのだろうか……。
16世紀の中央アメリカで繁栄していたアステカ帝国の滅亡を縦軸に、一人の不思議な少女と周囲の人々のたどる数奇な運命を描いた歴史ドラマ。

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注意事項



アステカの少女



○登場人物

  蜂鳥(召使の少女)

  大神官

  黒曜石(神官見習い)

  石英(王子)


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   『アステカの少女』 作・山本真紀

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《0》プロローグ

蜂鳥 「現在の人間の歴史が始まるまでに、世界は、いくたびか滅
    びを経験してきたという。この世界も、いつかは終末を迎
    える。でも、それをできるだけ先に延ばすために、人々は
    いけにえを捧げ、神をたたえる儀式を行っているのだ。
    ずっと不思議に思っていた。どうして、神話では必ず天地
    創造が語られるのだろうと。その場に居合わせた人なんて、
    いるはずないのに。さも本当のことであるかのように語り、
    押し付けてくる神話や伝承、物語というものが、私はきら
    いだ。
    でも、今から私が語るのは、本当にあったことで、だから、
    本当の物語だ」

     (溶暗)


《1》予兆

     雨の神の神殿にて。
     少年の前に、大神官が姿をあらわす。
     少年は一礼して、大神官の言葉を待つ。

大神官「黒耀石」
黒曜石「はい」
大神官「礼はおやめ」
黒曜石「そういうわけには……」
大神官「困る?」
黒曜石「はい」
大神官「他人行儀にされると疲れるの」
黒曜石「しかし」
大神官「何?」
黒曜石「あなたは大神官でいらっしゃいます」
大神官「そうね」
黒曜石「私などが、軽々しく口をきける身分ではありません」
大神官「気にしなくていい」
黒曜石「いいえ」
大神官「そう、仕方ないね。こちらへいらっしゃい」
黒曜石「え?」
大神官「こちらへ」

     黒耀石、近寄る。

大神官「早くいらっしゃいと言うのに」
黒曜石「はい。(ひざまずく)」
大神官「これ、好きだったでしょう?」
黒曜石「え?」
大神官「おやつよ。子供の頃、好きだったでしょう?」
黒曜石「さあ」
大神官「さあって、覚えてないの?」
黒曜石「はい」
大神官「うそ。よく食べてたでしょう?」
黒曜石「覚えていません」
大神官「ねだりに来たから、ないしょでいくつか分けてあげたこと
    もあった」
黒曜石「はい」
大神官「そうでしょう?」
黒曜石「はい」
大神官「遠慮しないでいいのよ。さあ、早くおあがり」
黒曜石「いえ、結構です」
大神官「ほかの者はここには来ない。私が呼ばない限り、入ってこ
    ないように命じてある」
黒曜石「はい」
大神官「ふたりだけだから、礼儀など気にしないでいい。食べなさ
    い」

     黒耀石、食べる。

黒曜石「なつかしい味です」
大神官「そうでしょう」
黒曜石「ちっとも変わってらっしゃらないんですね」
大神官「あなたもね」
黒曜石「少し背が伸びました」
大神官「そうね。顔も違って見える」
黒曜石「ここでの修業を認めていただいて、光栄です」
大神官「当然でしょう、あなたの願いとあれば」
黒曜石「採用していただけるとは思ってもいませんでした」
大神官「昔のよしみで聞いてもらえるとは思わなかったの?」
黒曜石「そんなだいそれたこと……。あなたが一介の見習いにわざ
    わざお会いになることは、めったにないと聞いてきました」
大神官「誰がそう言ったの?」
黒曜石「ほかの者たちです」
大神官「あなたは、いつでもここに来ていいのよ。ほかの者とは違っ
    て、単なる見習いじゃないんだから」
黒曜石「ありがとうございます」
大神官「なつかしいこと。本当に何年ぶりかしら。小さかったあな
    たが、今ここに神官の服を着てすわっているなんて。どう
    して、いくさの神に仕えなかったの? 男子なら、当然希
    望するはずじゃないの?」
黒曜石「私は、いくさが好きではないんです」
大神官「口にしていいことではないわね」
黒曜石「はい。でも私は、大地を潤し、作物の実りをもたらす雨の
    神が、もっとも偉大だと思います」
大神官「いくさは何も生みださない」
黒曜石「その通りです」
大神官「でも必要なのよ、特に今は」
黒曜石「知っています。神々は儀式を望まれる。そのいけにえは、
    儀式によって得られる」
大神官「子供でも知っていることよ。でも、もしかしたら、近い将
    来、別の意味でいくさが必要になってくるかもしれない」
黒曜石「今更、我々にはむかう部族があるとは思えませんが」
大神官「ええ」
黒曜石「だったら、なぜ?」
大神官「最近、あちこちから不吉な噂が聞こえてくる」
黒曜石「どんな噂ですか?」
大神官「石が口を利いて、旅人におかしな予言をしたとか。湖の東
    の村で、頭がふたつついた人間が見つかったとか」
黒曜石「何ですか、それは。頭のふたつある人間が、しるしですか? 
    石がした予言は、何だったんでしょう」
大神官「わからない。残念ながら伝わってないの。本当に、知らない
    の?」
黒曜石「初耳です」
大神官「信じられないわ」
黒曜石「……」
大神官「そんな折に、あなたが雨の神の神殿に入った……これは、
    どういうことなのかしらね。なぜ、いくさの神ではないの? 
    あなたは、何をもたらすの?」
黒曜石「何も。何もありません」
大神官「そう。あなたは長くはここにいないでしょう」
黒曜石「それは私の望みではありません」
大神官「そうかしら? ……もうさがりなさい」
黒曜石「はい」
大神官「またいらっしゃい」
黒曜石「お召しとあれば、すぐにまいります」
大神官「来たいときに来てもいいということよ」
黒曜石「ありがとうございます」

     黒耀石、去る。
     大神官、お菓子が残されているのに気づく。

大神官「蜂鳥、ここにおいで」

     少女が現れてひざまずく。

大神官「さきほどの神官見習いの子に、これを持っていっておやり」
蜂鳥 「はい。大神官さまに、申し上げます」
大神官「なに」
蜂鳥 「貴い血筋のかたが、大神官さまにお目にかかりたいとおっ
    しゃって、そこでお待ちになっています」
大神官「そう。誰かしら。入っていただきなさい」
蜂鳥 「はい。……いらっしゃいません。どこかにいかれたようで
    す」
大神官「ちゃんとおもてなしをしたの?」
蜂鳥 「はい。さっきはいらっしゃったのですが……」
大神官「どんなかた?」
蜂鳥 「まだお若いかたです」
大神官「本当に誰かしら」

     大神官、去る。
     入れ替わりに、青年(石英)が入ってくる。
     蜂鳥、ひざまずく。

石英 「大神官は、どこに行かれたのかな?」
蜂鳥 「存じません。あなたさまをさがしに行かれました」
石英 「そうか、悪いことをしたね」
蜂鳥 「何かお持ちしましょうか?」
石英 「今、持っている菓子がほしい」
蜂鳥 「これはさしあげられません」
石英 「どうして」
蜂鳥 「大神官さまの命令で、他の人にさしあげるものです」
石英 「大神官には、俺が所望したと言えばいい」
蜂鳥 「お許しください」
石英 「叱られたりしないよ、保証する」
蜂鳥 「でも、そんなこと、わかりません」
石英 「大丈夫だって。大神官より、俺のほうがえらい」
蜂鳥 「(疑惑に満ちたまなざし)……大神官さまをお呼びします
    ので、しばらくお待ちいただけますか」
石英 「もうだいぶん待った。あんまり退屈だから散歩してきた。
    ここには子供の頃よく遊びに来ていた。なつかしいよ」
蜂鳥 「……」
石英 「蜂鳥というのか?」
蜂鳥 「はい」
石英 「いさましい名前だ」
蜂鳥 「はい」
石英 「普通、男につけるんじゃないのか?」
蜂鳥 「はい」
石英 「ここでずっと働いているのか?」
蜂鳥 「はい」
石英 「働き者だということはわかる」
蜂鳥 「……」

     蜂鳥、お菓子をとられてしまう。

石英 「(好きなだけつかんで、残りは蜂鳥に返す)なつかしい味
    だ。子供の頃の無邪気な心にかえれる」
蜂鳥 「……」
石英 「大神官には、俺から言っておこう」
蜂鳥 「お願いいたします」
石英 「おいしいな」
蜂鳥 「そうですか」
石英 「おまえも食べろ」
蜂鳥 「申し訳ありません」
石英 「腹の具合でも悪いのか?」
蜂鳥 「いいえ」
石英 「俺の言うことがきけないのか」
蜂鳥 「……」

     大神官が入ってくる。

石英 「さんざん待たせて、やっと、お越しになりましたか」
大神官「私も忙しい身です。貴い血筋のかたの気まぐれにつきあっ
    て、鬼ごっこ遊びをしている暇はありません。さて、石英
    王子。今日はどのようなご用件でしょう」
石英 「王の使いで来た」

     大神官、石英に上座をゆずる。蜂鳥は出ていく。

石英 「最近、東の空高くに、穂の形をした火が出現している。そ
    の火によって神が何を警告しているのかを知りたい。宮殿
    の星見台にすぐにおもむけ」
大神官「仰せに従いまして、すぐにまいります」
石英 「忙しいね、本当に。各地から不吉な噂が聞こえてくるが、
    それが何を示しているか読み取れた者は、誰もいない」
大神官「私も力を尽くすつもりです」
石英 「力が及べばいいね。王だけでなく、俺も知りたいと思って
    いる。健闘を祈るよ」
大神官「ご用向きはそれだけでしょうか」
石英 「それだけだ」
大神官「では、失礼いたします」

     大神官、去る。
     石英も去ろうとする。

黒曜石「兄上」

     黒耀石、石英の前にひざまずく。

黒曜石「黒耀石です」
石英 「……」
黒曜石「よく、この神殿でお会いしました」
石英 「……」
黒曜石「兄上、これがお好きだったでしょう?(お菓子を差し出す)」
石英 「さっきもらったからいい。……いや、やっぱりもらっとこ
    う」
黒曜石「ありがとうございます」

     石英、去る。
     (溶暗)


《2》兄弟の語らい

黒曜石「大神官は、まだ戻られないのか?」
蜂鳥 「はい」
黒曜石「宮殿におもむかれてもう一週間。星見には十分だろう。結
    果が何と出たか知りたい」
蜂鳥 「私は存じません」
黒曜石「神官たちは、何と言っていた?」
蜂鳥 「……」
黒曜石「君の前で、何かしゃべったりするだろう、何か」
蜂鳥 「結果については何も聞いていません」
黒曜石「そうなのか」
蜂鳥 「あの光が何の予兆か、結局わからないそうです」
黒曜石「何だって?」
蜂鳥 「星見ができないそうです」
黒曜石「うそだろう?」
蜂鳥 「いいえ」
黒曜石「星が読めないって?」
蜂鳥 「はい。そうお聞きしました」
黒曜石「大神官にもわからないなんて……」
蜂鳥 「あの火は星です。数十年に一度現れて、そのたびに、人々
    におそれられるのですが、ただの星です。あと数か月もす
    れば消えます」
黒曜石「ただの星があのような形をしているはずがない」
蜂鳥 「星にも、いろいろな形があります。今までも、あのような
    ほうき星が見られた例がありました」
黒曜石「神官でもない君が、どうしてそんなことを知っているんだ?」
蜂鳥 「大神官さまのおそばに仕えておりますから、いろいろ知る
    こともあります」
黒曜石「それなら、大神官は、その星について知っているんだな。
    じゃあ、どうして星見ができないんだ」
蜂鳥 「存じません」
黒曜石「大神官は今どこにいらっしゃるんだ? 宮殿か?」
蜂鳥 「存じません」
黒曜石「いつ戻られる?」
蜂鳥 「存じません」
黒曜石「そろそろ戻られてもいい頃だが……」

     そこへ、石英がやってきた。

石英 「なんだ。おまえ、黒耀石だったっけ」
黒曜石「はい」
石英 「見習いか?」
黒曜石「はい」
石英 「そうか。(去ろうとする)」
黒曜石「兄上」
石英 「なんだ」
黒曜石「大神官が今どうしているか、ご存じですか?」
石英 「知ってる」
黒曜石「宮殿で星見をなさっているんですか?」
石英 「いいや」
黒曜石「じゃあ……」
石英 「三日前に、つかまってどこかに入れられた」
黒曜石「そうですか……」
石英 「もう二度と大きな顔をすることもないだろうよ。もともと
    実力もないくせに、あつかましく王に進言などで取り入っ
    て出世したやつだからな」
黒曜石「……」
石英 「不満そうだな」
黒曜石「子供の頃、かわいがっていただきました」
石英 「そうか、気の毒に」
黒曜石「兄上もでしょう?」
石英 「いや。俺は子供の頃から、あの女がきらいだった。そんな
    に心配するころはない。王は気まぐれだ。すぐに出してや
    るだろう。……思い出した。おまえは、黒耀石だ」
黒曜石「はい」
石英 「母親が雨の神の神官をしていた」
黒曜石「はい」
石英 「思い出した。この辺に遊びにくるたびにまとわりついてき
    た弟だ。大きくなったな」
黒曜石「はい」
石英 「おれはあの女がきらいだが、それもおまえが原因だ」
黒曜石「……」
石英 「わからないのか、それともわからないふりをしているのか」
黒曜石「わかりません」
石英 「この神殿でのつとめに満足しているか?」
黒曜石「はい」
石英 「結構。一生続けろよ」
黒曜石「はい」
石英 「ちっとも変わってないな。そう見えているおまえが、本物
    のおまえならな」
黒曜石「いいえ。変わりました。大人になりました」
石英 「いいや。まったくの子供だ」

     蜂鳥、さりげなくさがろうとする。

石英 「待て」
蜂鳥 「はい」
石英 「おまえはこの前の召使だな?」
蜂鳥 「はい」
石英 「何か気にいらないことがあったが……。 そうだ、なぜお
    まえはあの菓子を食べなかった」
蜂鳥 「……」
石英 「おれの命令だった」
蜂鳥 「……」
黒曜石「どうかしましたか?」
石英 「この女は、俺が菓子をやったのに食わなかった」
黒曜石「この子はあまり食べないんです。許してやってください」
石英 「俺に命令するのか」
黒曜石「いいえ、お願いしています。それに、私も今この子と話を
    していたところですし、お許しいただければありがたいの
    ですが」
石英 「おまえの女か」
黒曜石「ちがいますっ!」
石英 「そうか。おい、神殿にはほかにいっぱい召使がいるだろう。
    この女はもらっていく。さあ行くぞ」
蜂鳥 「まいりません」
石英 「黒耀石、神殿ではどういうしつけをしているんだ? なぜ
    こいつは俺にさからう?」
黒曜石「兄上は評判通りの方ではありませんね」
石英 「何だ」
黒曜石「老若男女を問わず、自分の意のままに従わせる力をお持ち
    だと、聞いておりました。特に、女性に対してはその魅力
    を遺憾なく発揮されると、私どものところまで噂が聞こえ
    てきます」
石英 「その通りだが、これは女ではないらしい」
黒曜石「許してやってください。大神官のおそばに仕えていまして。
    いないと不自由されると思うんです」
石英 「あとでこの女をよこしてくれ」

     石英、去る。

黒曜石「兄上は君にご執心だ」
蜂鳥 「……」
黒曜石「君は普通の生活を送れなくなる」
蜂鳥 「望んではおりません」
黒曜石「何を? 兄の寵愛をか?」
蜂鳥 「はい」
黒曜石「じゃあ、何を望む?」
蜂鳥 「平和な、何事もない生活を望みます」
黒曜石「君のような若い女の子には珍しい望みだ」
蜂鳥 「そうでしょうか?」
黒曜石「君には野心はないのか?」
蜂鳥 「野心が、召使に何の関係がありましょう」
黒曜石「そうだな」
蜂鳥 「平和な生活をということ自体も、大それた願いです」
黒曜石「私の願いも同じだ。ただ、周囲が許してくれないかもしれ
    ない」

     大神官、現れる。

大神官「黒耀石、私をさがしていたそうね」
黒曜石「いつ戻られたんですか?」
大神官「たった今」
黒曜石「お疲れのようですね」
大神官「ええ。蜂鳥、何か飲み物を持ってきてちょうだい」
蜂鳥 「はい」

     蜂鳥、さがる。

大神官「きわみの位についてしまうと、かえって不自由ね」
黒曜石「そうでしょうか?」
大神官「ええ」
黒曜石「星は何を告げていたのですか?」
大神官「わからない。私には読めなかった」
黒曜石「……」
大神官「私には、そんなに力がないのよ。先代は偉大な方だったけ
    れど」
黒曜石「そうですか……」
大神官「いいしるしではないことは確かよ。ただ、具体的に何を示
    しているのかは、わからない」
黒曜石「あれは何のしるしでもなく、ただのほうき星でしょう?」
大神官「どうして?」
黒曜石「さっきの召使がそう言っていました」
大神官「たわごとよ」
黒曜石「大神官さまから学んだと言いましたが……。そう、兄上、
    いえ、石英王子が、あの召使が気にいったのでよこして
    ほしいと、おっしゃっていました」
大神官「断るわ」
黒曜石「でも……」
大神官「私が返答しておきます」
黒曜石「わかりました」
大神官「さがりなさい」
黒曜石「はい。(礼をする)」

     (溶暗)


《3》千一夜の始まり

大神官「結局あの火の意味するものは何だったのか、私の力が及ば
    ず、読み取れませんでした」
石英 「あれは神ののろしなのか?」
大神官「わかりません」
石英 「火は、いくさを意味するのではないか?」
大神官「ふつうなら、そうでしょう。ただ、あのような形のものが
    空に現れたという記録はないのです。きわめて異常なこと
    です」
石英 「東の国の海岸に、白き神々が現れたらしい」
大神官「……!」
石英 「彼らは、海を渡ってやってきた。白い山なみが海の向こう
    に見えたかと思うと、それは巨大な鳥の羽となって風を受
    け、はばたいた。白い鳥に乗ってやってきたのは、同じく
    白く輝く肌をした神々だ。王はすぐに、その神々がだれで
    あるかを知るために、使いをやった」
大神官「それで……?」
石英 「使者は、神を怒らせてしまったらしい。神は、いけにえの
    血をいとわれた。からだにかかった血しぶきを見て、大声
    で叫び、怒り狂ったという」
大神官「今年は、一の葦の年……」
石英 「そうだ。一の葦の年に戻ってくると誓った、ケツァルコア
    トルに違いない」
大神官「ケツァルコアトル神は、我々に何を求めていらっしゃるん
    でしょう」
石英 「わかりきっている」
大神官「……罰ですね」
石英 「そうだ。いけにえの儀式をやめなかった我々を罰するおつ
    もりだ。あの火は、神が再来するという知らせだったので
    はないか?」
大神官「そうなのでしょうか」
石英 「そこで、年来の議論にもどるわけだ。いけにえは是か、非
    か」
大神官「いけにえを捧げなければ、太陽はその力を失い、この世は
    闇と化すしょう。ほかの神々にしても、いけにえを捧げな
    ければ、我々に制裁を加えようとなさるでしょう」
石英 「別の考え方もある。いけにえを捧げないで力を弱らせてし
    まえばいいんだ」
大神官「王子!」
石英 「あなたの立場と俺の立場は違う。神への信仰さえ守ってい
    ればいいあなたと、国の、王位の存続を考えねばならない
    俺たち王族とは、根本的に立場が違うからね。いちいちと
    がめだてしないでほしい」
大神官「ケツァルコアトル神は、メシカの正当な王位を望まれるで
    しょう」
石英 「わからんね。神には、元いた場所にお帰りいただくほうが
    よい。いったい、あなたはなぜ、王位継承者の俺に反発す
    る? 王にそむく心でもあるのか?」
大神官「とんでもない。ただ、あなたのお考えは、あまりに性急で
    ……」
石英 「危険か」
大神官「伝統とは、より合わされた縄のようなもの。それを断ち切っ
    ては、頼るよすががなくなります」
石英 「伝統なんて、やっと権力の座にありついた年寄りたちのた
    わごとさ。頼るよすががなくて困るのは、年寄りだけだろ
    うからね。神の権威を保ち、国の基である王座をよそもの
    に明け渡す。あなたの考えそうなことだ」
大神官「……」
石英 「その点、あの弟なら素直で扱いやすいだろう」
大神官「……」
石英 「黒耀石だよ。もともと、あいつは太陽の神ウイツィロポチ
    トリに仕えるか、戦士になるかだったんだ」
大神官「雨の神に仕えるのが、あの方の本意です」
石英 「だが、正しいことではない。あいつの立場からはね」
大神官「あなたは、神々といくさをなさるつもりですね?」
石英 「答えると思うのか? 先日、黒耀石に俺の希望を伝えてお
    いたんだが聞いただろうね」
大神官「何か?」
石英 「神殿の召使で、かわいい子がいるんだ。蜂鳥というんだが」
大神官「蜂鳥が、何か?」
石英 「ちょっとそそうをしたんで、叱りたい」
大神官「申し訳ございません。こちらで叱っておきます」
石英 「いや、いい。もうこちらに来てるから。というわけで、了
    承していただきたい」
大神官「あの子は私のそばで使っている者で、召しあげられては困
    ります!」
石英 「代わりの子をよこすよ。黒耀石を呼んできてくれ」

     大神官、去る。
     入れ替わりに、黒耀石が入ってくる。

石英 「黒耀石」
黒曜石「はい」
石英 「さっきの話を聞いていたか?」
黒曜石「いいえ、隣に控えていたので、聞こえませんでした」
石英 「そうか。まもなく、王位継承が行われる」
黒曜石「そうなのですか?」
石英 「そうだ」
黒曜石「そうですか」
石英 「誰が王になると思う?」
黒曜石「それは顧問会議で決まることでしょう」
石英 「おまえはどう思う?」
黒曜石「兄上か、ほかの兄上です。私は神官の道を選んでしまいま
    したから」
石英 「なんで、雨の神の神官になりたいんだ?」
黒曜石「兄上は、私にどうしてほしいのですか?」
石英 「わからない」
黒曜石「私にできることは多くありません。そういう立場に満足し
    ています」
石英 「……俺とは違うな」
黒曜石「何を悩んでいらっしゃるんですか?」
石英 「ケツァルコアトルが、東の海岸に現れたらしい」
黒曜石「ケツァルコアトルが? 神が戻って来られたんですか?」
石英 「そうらしい」
黒曜石「正当な主に、テノチティトランを返す時がきたんですね?」
石英 「そうだ」
黒曜石「予言通りだ」
石英 「王位を返してそのあとどうなる」
黒曜石「神に仕えればいいと思います」
石英 「いけにえを禁じる神に仕えられるか!」
黒曜石「神と事を構えるなんておそろしいことです」
石英 「神がやってきたら、歓迎するのか?」
黒曜石「生きているうちに拝めるとは思っていませんでした」
石英 「本当にいけにえを禁じられたら、ほかの神々はどうなる。
    ケツァルコアトルの機嫌をとって、ウイツィロポチトリの
    怒りを招くのか?」
黒曜石「それは……。ケツァルコアトルとお話ししないと」
石英 「これだ。神官どもは、いつもこれだ」
黒曜石「王は、どのようにお考えですか? 兄上ならご存じでしょ
    う?」
石英 「王は迷っている。先日も、王子たちを集めてこうおっしゃっ
    た。『我々はどうなるのだろうか。誰が生き残るのだろう
    か。私の心は、チレの水につけられたかのごとく、ひりひ
    り痛む。神に問いかけても答えは帰ってこない』……と」
黒曜石「神の裁定を、待つしかないでしょう」
石英 「ああ。待つしかない」

     蜂鳥、やってくる。

石英 「しゃべりたいか?」
黒曜石「いいえ、別に」
石英 「遠慮しなくてもいい」
黒曜石「遠慮はしていません」
石英 「蜂鳥は賢い。重宝しているよ」
黒曜石「そうですか。蜂鳥」
蜂鳥 「はい」
黒曜石「君は星に興味があるのか?」
蜂鳥 「はい」
黒曜石「なぜ?」
蜂鳥 「星は、我々人間の運命を語ります」
黒曜石「星見を学びたければ神殿に来るといい。君はくわしいよう
    だがね」
石英 「初耳だ。どこで学んだんだ?」
蜂鳥 「神殿で学びました」
石英 「召使の身で?」
蜂鳥 「はい。聞いて覚えました」
黒曜石「この間、君が言ったことは、神官も知らない。大神官でさ
    え、知らなかった」
蜂鳥 「……」
黒曜石「兄上、失礼します」

     黒耀石、去る。

石英 「神殿に帰りたいか?」
蜂鳥 「はい」
石英 「どこだっていいじゃないか。神殿にいようが、ここにいよ
    うが、おまえは召使なんだ」
蜂鳥 「はい。どこでも同じです」
石英 「何か話をしてくれ」
蜂鳥 「どんな話でしょうか?」
石英 「何でもいい!」
蜂鳥 「第一の太陽は水の太陽で、この時代は巨人の世界でした。
    巨人たちは洪水で滅びてしまいました。第二の太陽は風の
    太陽です。この時代の人間たちは、激しい風に吹き飛ばさ
    れて滅びてしまいました。第三の太陽は火の太陽です。火
    山という火山が怒りに震え、赤いベールを大地に浴びせか
    けました。世界は三たび終わりを告げました。第四の太陽
    は大地の太陽で、豊かな実りをもたらしました。しかし豊
    かさにおごった人間たちを見て、神々はこの世界も滅ぼす
    ことにしたのです」
石英 「もういい! そんなことは、子供でも知っている!」
蜂鳥 「長い旅を続けてきてテノチティトランにたどりついた頃の
    メシカ族は迫害され続けた小さな一部族に過ぎませんでし
    た。この地で勢力を得るために、メシカの指導者たちはあ
    らゆる努力をしました」
石英 「王の祖先も初めはそんなもんだ」
蜂鳥 「当時はトルテカの勢力が強く、一番高貴な血筋の部族とし
    て尊敬されていました。だから、メシカの指導者はこう考
    えたのです。……トルテカの威光をそのままメシカにうつ
    しかえようと。具体的にどうしたかと言うと、トルテカの
    神話を改ざんしたのです」
石英 「神話を改ざんして何になる?」
蜂鳥 「トルテカの神よりもメシカの神のほうが偉大なのだと、ほ
    かの部族にも思い込ませたのです。トルテカの神ケツァル
    コアトルを追い払ったのは、メシカの神ウイツィロポチト
    リだと。先住の部族は、新しくきたメシカを恐れるように
    なりました」
石英 「それはつまり、神を利用したということか?」
蜂鳥 「はい。トルテカの神を利用し、冒涜したのです」
石英 「続けろ」
蜂鳥 「神話や神に、何の力もありません。力を持つのは、人間が
    それを利用してふるうからです」
石英 「なぜそう言い切れる?」
蜂鳥 「時代によって、信じる神の姿は変わります。神さえない時
    代もありますが、それでも人間は滅びていません」
石英 「もうじき滅びるかもしれない」
蜂鳥 「この地の神話に基づけばそうでしょう」
石英 「ほかにどんな神話があるんだ? 野蛮な民族の神話か?」
蜂鳥 「メシカは、もともと北の大陸から渡ってきた部族です」
石英 「何だって?」
蜂鳥 「昔のメシカは弱く、他の部族に追われてやむなくこの地へ
    移ってきたのです。北の大陸に住んでいた頃も、いつもお
    びえてくらしていました。それも、メシカがよそものだっ
    たから。
    もっと時代をさかのぼると、北の大陸につながる別の大陸
    に住んでいた時期もあります」
石英 「なぜそんな長い旅をしたんだろう?」
蜂鳥 「知りません。でも、どうやってかなら知っています。
    世界が雪と氷にとざされた時期がありました。水が少なく
    なって、海の上に道ができました。陸と陸をつなぐ細い道
    です。その上を渡って、メシカの祖先は北の大陸にやって
    きたのです。
    ところが、道を渡ってしまってから、やはり故郷に戻りた
    いと言い出した女がおりました。彼女は、長い旅の前に、
    年老いた母を置いてきてしまったのです。一族の者は怒り、
    説得しましたが、聞き入れません。海の上の道を彼女は駆
    けていきました。その時、海の氷が解けて津波となり、あっ
    という間に女をのみこんでしまったのです。海の上の道は
    二度と開かれることはありませんでした。メシカは、こう
    して、故郷を失ったのです」

     (溶暗)


《4》宗教論争

大神官「この一月でいったい何人のいけにえを捧げたと思う? な
    のに全くききめがない。なぜ神は答えて下さらないのか」
黒曜石「まだ、神は満足しておられないのです」
大神官「満足? そうでしょうね。ご自分の民が、異邦人の兵士に
    よってなぶり殺しにされ、屈辱を受けているというのに、
    見て見ぬふりをなさっている。なぜ、雷を投げつけて敵を
    焼きつくして下さらないのか。洪水を起こしておぼれさせ
    てしまわないのか」
黒曜石「結局、あれは白き神々ではなかったんです。海を渡ってやっ
    て来た野蛮人に過ぎません」
大神官「その通りよ。なら、なぜ野蛮人どもを滅ぼして下さらない
    の?」
黒曜石「我々だけではありません。全ての民が、そう問いかけてい
    ます。神に対して。神殿に対して」
大神官「そして、私たち神官に対してね」
黒曜石「はい」
大神官「答えるすべは持たないわ」
黒曜石「もし、これが神の意志なら──」
大神官「何が?」
黒曜石「我々メシカの民の滅亡です」
大神官「だったら、どうなの?」
黒曜石「従わねばならないのでしょうか?」
大神官「……」
黒曜石「当然そうでしょう。従うも何も、神の決定に対して何がで
    きますか? あの第四の太陽の時代の終わりに、人間は無
    力でした。神々に滅ぼされたんです」
大神官「私たち神官のつとめは何?」
黒曜石「……」
大神官「ひたすら仕えること」
黒曜石「さっきおっしゃったではありませんか。我々は皆同じ問い
    を発していると。偉大な意志がわからず、何を信じて良い
    かわからないんです。日々の祈りの中で、私は神をたたえ
    ます。舞いを捧げたり、仲間と声を合わせてうたったり、
    そして祭りの中で、生けにえの体が切りひらかれて、した
    たったその血の色を見ると──おわかりでしょう、確信す
    るんです。その瞬間、わかる。全てがあるべき姿であり、
    運命であり、宇宙は正しく運行されていると。
    ところが、次の瞬間、何もかもが空疎に見えるんです。まっ
    くらな、からっぽの穴に向かって叫び続けているような気
    がして──。
    神が、いないんじゃないかと思う時があるんです」
大神官「私も同じよ、黒耀石」
黒曜石「救いがないですね」
大神官「救いなんてないわ。あるのは、物事の因果だけ」
石英 「黒耀石」

     石英が来ていた。(蜂鳥も)

黒曜石「いついらっしゃったんですか?」
石英 「たった今。皮肉なことだ。ケツァルコアトルだ、神の再来
    だと言って大騒ぎした相手は、単なる野蛮人だったとはな!」
大神官「目新しい知らせではありませんね」
石英 「ああ、民草さえ、街角で同じ台詞を吐いている。奴らは今
    トラスカラ族の居住地に滞在して、何やらもくろんでいる
    らしい」
黒曜石「そうなんですか」
石英 「お祈りさえしていれば、安泰か? 大神官、悪いが外して
    くれないか」

     大神官、去る。

石英 「王の顧問団から、不満の声が出始めているんだ」
黒曜石「誰に?」
石英 「他ならぬ王に対して」
黒曜石「なぜですか?」
石英 「連中は、王の態度が煮え切らないんで、しびれを切らした
    んだ。あれがケツァルコアトルではなく野蛮人だとわかっ
    たんなら、さっさと片付けるべきだと」
黒曜石「そう簡単には行かないでしょう。あちらには、得体の知れ
    ない武器があると聞いています。下手に手出しするよりは、
    何とか友好的につき合っていこうと、王はお考えなのでは?」
石英 「その考えが気に入らないようだ。──まもなく、王の選定
    が行われる。俺は勿論候補のひとりに入る。そこでだ。黒
    耀石。もし、俺が王位に就くことになれば、おまえは俺に
    つくか?」
黒曜石「兄上にそむくつもりはありません」
石英 「どういうことだ」
黒曜石「顧問の一人が私にも打診してきました」
石英 「それで?」
黒曜石「政治にかかわりたくはないんです。だから神殿に来たのに」
石英 「どうするんだ」
黒曜石「まだわかりません。兄上が王に立たれる方が良いんです」
石英 「……」
黒曜石「野蛮人の問題については、神殿も頭を悩ませているんです。
    蜂鳥。君は、神の再来とあの空の火とは関係ない、ただの
    星なんだと言ったね」
蜂鳥 「はい」
黒曜石「君の言った通り、空の火は消えた。ところが実際によくな
    い事が起こっている。やはりあれは予兆だったんじゃない
    のか?」
蜂鳥 「いいえ、違います。あの星は、人間の世界の出来事とはか
    かわりなく一定の期間をおいて現れるものです」
黒曜石「大神官をお呼びしてくるんだ」

     蜂鳥、去る。

石英 「一体何なんだ?」
黒曜石「ああいう知識をどこで仕入れたんでしょうね」
石英 「母がトルテカの血を引いていたそうだ。トルテカの思想や
    文明には学ぶところが多い。一見異端のようで、筋が通っ
    ている」
黒曜石「トルテカとも違う。私は神殿で学んだんです。あれは違い
    ます」

     大神官、蜂鳥を伴ってやってくる。

大神官「話は終わったのですか?」
黒曜石「大神官さま、この者は大地の女神チコメコアトルの化身で
    す。即刻女神をたたえる祭りを行い、この者を神に捧げま
    しょう」
蜂鳥 「いやです」
大神官「何を言うの。神に捧げられるのは名誉なことよ」
蜂鳥 「名誉でも、そんな死に方をしたくありません」
大神官「苦痛はないのよ。知っているでしょう?」
蜂鳥 「嘘です。あなたは死んだことがないから、そう言うのよ」
大神官「私は沢山の死を司ってきました。みな与えられた名誉に感
    謝して死んでいったわ」
石英 「待て。蜂鳥は俺のものだ。そんなことは許さん」
大神官「許すも何も、蜂鳥は女神の化身としてあがめられるのです。
    既にあなたの持ち物ではありません」
蜂鳥 「やめて下さい。私は誰のものでもありません」
黒曜石「この者は異端です。メシカの民でありながら、異邦人の魂
    を持っています」
石英 「だから生けにえとして捧げると言うのか?」
黒曜石「兄上はたぶらかされているんです。この者の語る言葉は危
    険です──毒となって血管をめぐり、脳を冒し、やがては
    同胞にそむく行為に走らせる。目の前の敵と戦いながら、
    ご自分のそばに別の敵を置くつもりですか?」
蜂鳥 「私はあなた方の敵ではありません。あなた方が、私の敵な
    のよ」
大神官「神は、この者のメシカの肉体と異邦の魂を共に味わわれる
    でしょう。
    二十日後に、祭りをとり行います」

     大神官、去る。黒耀石も従う。

石英 「俺が何とかする。俺が何とかするよ」
蜂鳥 「名誉なことでも何でもないのよ。知ってるのよ。神に選ば
    れた女が、首をはねられた瞬間──首が胴体から離れて空
    を飛び、女の魂は、何もない、乾いた、はてしない暗黒の
    中へ吸い込まれていった。あれを神と言うなら。あれは神
    ではない。神なんていないのよ。知ってるの。私は、その
    女の切りさかれた腹から取り出されたの。だから、知って
    いるのよ」
石英 「やめろ! そんなことにはならないと言ってるだろう!」
蜂鳥 「無理よ。その言葉は私たち何度も言ったわ。でも駄目だっ
    た。みんな死んだわ」
石英 「私たちって、誰のことだ?」
蜂鳥 「私たち──私をつくったすべての人たち。何世代も何十世
    代もの人々が、私の中に生きているの」
石英 「また不思議なおとぎ話か?」
蜂鳥 「そうよ。神話も、伝承も、目に映るものすべてと同じ──
    現実に存在しているのよ」
石英 「おまえの中の誰かに聞いてくれ。本当に、誰一人として、
    助けられなかったのか?」
蜂鳥 「助けてやりたかった。でも、助けようとはしなかった」

     (溶暗)


《5》いけにえの祭り

1  「次代の王にふさわしいのは誰か」
2  「王が、これほど早く死ぬとは思わなかった。全くもって不
    名誉な……」
3  「野蛮人どもの問題、他部族の反乱、国が揺れ動いている」
2  「この時期に死んでもらっては困るのだ」
3  「仕方がない。神に捧げられることなく死んだのは、当人の
    責任だ」
2  「早く次の王を立てねばなるまい」
1  「意見をお聞かせ願いたい」
3  「王子たちのうちから選べばよかろう。年若く、雄々しい心
    を持つ者を選ぶのだ」
2  「腰抜けにはつとまらない」
3  「かといって、頭に血がのぼりやすいようでは困る」
1  「血筋の点も考えていただきたい。王の息子は二人いるが、
    ご存じの通り一人は戦士としての体を持たず、一人は子供
    だ。王の血筋の男は、あと五人いる」
3  「神殿に仕えている王子なら申し分ない」
1  「少し穏やかすぎるように思うが、思慮深い王子だ」
2  「もう一人、若いがジャガーの心を持った王子がいる」
1  「覇気がある」
2  「その通りだ」
1  「先日よりずっとこの会議を続けてきた。次代の王を決める
    のは我々だが、あなたも意見をお聞かせ願いたい。大神官
    殿」
大神官「二人の王子の過去と未来を占ってみました。王子の一人に、
    黒い影が見えます。影の落ちる先は過去、先の王の死です」
2  「どういう意味だ」
大神官「それ以上のことは分かりかねます」
3  「そういえば、奇妙なうわさを聞いた。先の王をほふった石
    のつぶては、王の背後から飛んできたと」
1  「それで死んだわけではない」
3  「しかし、その傷がもとで病みついて死んだのだ」

     (溶暗)

黒曜石「兄上」
石英 「何だ」
黒曜石「初めてお会いした時のことを覚えていますか?」
石英 「いつのことだ」
黒曜石「私は雨の神の神殿で育てられました。母は神官でしたが、
    度々お召しあっていないことも多かったものですから、私
    はほったらかし……自由気ままにできました」
石英 「……」
黒曜石「母が死んだ時、こんなに悲しいのが不思議でした。愛して
    はいないと思っていたのに」
石英 「母親の死が悲しかったんじゃない。おまえは、もう愛して
    もらえる機会を永遠に失ってしまったのが、悲しかったん
    だ」
黒曜石「そんなことはありません」
石英 「そうか?」
黒曜石「母が死ぬ少し前に、来客がありました。背の高い貴族で、
    部屋に案内したその人を見た瞬間、母の表情が変わりまし
    た。あんなに美しい表情は見たことがなく、私はもう、い
    たたまれなかった」
石英 「あの時か。神殿の門のそばにすわっていた」
黒曜石「すぐに分かりました。あの人にそっくりで、誇り高い様子
    で」
石英 「気に障ったのか。捨てられたのかと、俺は言った」
黒曜石「そうです。でも、続けておっしゃいましたね。
    おまえは王子だ。こんなところで、いやしい者たちの前で、
    情けない面をさらすんじゃない。鼻でもかんでこい」
石英 「よく覚えているな」
黒曜石「私は王子にはなれません。門のそばに立って、私を傲然と
    みおろしていたあの少年のようにはなれない。
    周囲の者が私に王の血筋の誇りを求める時、必ず、あの、
    土ぼこりの中にうずくまって泣いていた、みじめな自分の
    姿を思い浮かべてしまう」
石英 「俺には分からない」
黒曜石「そうだろうと思いました」

     大神官、現れる。

大神官「ここにいらっしゃいましたか」
石英 「何か」
大神官「先の王の死について、不審な点が出て参りまして、顧問貴
    族たちが今調べているようです」
石英 「どういうことだ」
大神官「王の死は今まで、海の向こうからやってきた野蛮人どもの
    陰謀による暗殺だとされてきました。ところが、実際はそ
    うではなく、我々メシカの民の一人によって殺されたので
    はないかということです」
黒曜石「そんなばかな」
大神官「詳しい調査はまだですが、その者を野放しにしておくのは
    危険です。いかがいたしましょうか」
石英 「決まっている。疑いがある以上、放っておくわけにもいか
    ない。すぐにとらえるべきだろう」
大神官「黒耀石さまは、どう思われますか」
黒曜石「兄上のおっしゃる通りです」
大神官「お聞きの通りです。石英王子、館に即刻戻って謹慎するよ
    うに。これは、顧問貴族と王の決定です」
石英 「謹慎? 誰にそんな権限がある」
大神官「さっき申しました」
黒曜石「王の決定って、王は決まったんですか?」
大神官「お祝い申し上げます。顧問会議により、黒耀石さま、あな
    たさまが新しい王となられました」
石英 「何だって」
大神官「この部屋の外にいる者たちが、館までお送りします。さあ、
    早く」

     石英、去る。

黒曜石「本当ですか」
大神官「王位におつきになられたこと、心よりお祝い申し上げます。
    亡き母上は、さぞお喜びでしょう」
黒曜石「ありがとう」
大神官「まずは、さきの王の名誉を取り戻すべく、野蛮人どもを征
    伐なさることです」
黒曜石「そうだ。それが先決だ。私はいくさを好まない、しかし、
    神が冒涜され、国を荒らされるのを黙って見ているつもり
    はない。メシカの民の誇りをかけて、戦わねばならない」
大神官「ご命令を」
黒曜石「最高神官である王の名のもとに、いけにえの儀式を命じる。
    大地の女神およびいくさの神にいけにえを捧げ、この戦い
    の勝利を祈念するのだ」
大神官「すでに準備しています」

     蜂鳥、現れる。

黒曜石「これが、いけにえか」
大神官「そうです。すでに、神の食事を与えてあります」
黒曜石「痛みは感じずにすむ」
大神官「その通りです。胸を切り裂かれても、痛みはほとんどない
    でしょう。むやみに苦痛を与えたくはありませんから」
黒曜石「……」
大神官「王ご自身の手でなさるほうがよいでしょう」
黒曜石「そうか」
大神官「大丈夫です。この者の心は眠っています。始めましょう」
蜂鳥 「待って。いけにえにしないで」
黒曜石「薬が足りないのではないか」
大神官「そんなはずはありませんが……」
黒曜石「蜂鳥? 目を覚ましたのか?」
蜂鳥 「蜂鳥は眠ってしまったわ。今この体は私のものなの」
大神官「何を言っているの?」
蜂鳥 「久しぶりね、ヨモギ」
大神官「何ですって」
蜂鳥 「あなたの名前を知る者は、みな、お墓の下に入ってしまっ
    たはず、そうでしょう?」
大神官「誰から聞いたの」
蜂鳥 「あなた自身から」
大神官「嘘よ」
蜂鳥 「嘘じゃないわ」
大神官「からかってるのね」
蜂鳥 「怒りっぽいのも昔といっしょね。私たち、友達だったでしょ
    う?」
大神官「誰のまねをしているの」
蜂鳥 「まねじゃない。蜂鳥は眠ってしまった。私はその体をまか
    されて、あなたと話をしているのよ。思い出さない?」
大神官「思い出すって、何を?」
蜂鳥 「私の名を」
大神官「知らないわ」
蜂鳥 「私は、雨の花」
大神官「……」
蜂鳥 「黒耀石。あなたの王位は安泰なものではない。早く都を脱
    出しなさい。さもないと、民だけでなくあなた自身にも、
    恐ろしい災難がふりかかる」
黒曜石「何をたわごと言ってる」
蜂鳥 「あなたの行く道に横たわる運命が、あなた自身には見えて
    ないのね。かわいそうに」
黒曜石「どんな運命だ?」
蜂鳥 「あなたは何一つ報われないでしょう。それどころか、大き
    すぎる代償を支払うことになる……」
黒曜石「遠回しな言い方をするな。何を予言しようというんだ」
蜂鳥 「あなたは、神を敵にまわして戦うのでしょう?」
黒曜石「白い肌の野蛮人を神と呼ぶなら、その通りだ」
蜂鳥 「神々と争って勝てると思うの。
    戦士たちの血が川のように流れだし、逃げ惑う人々も無防
    備に切り裂かれ、ずたずたにされてゆく。切り落とされた
    首や腕が、持ち主を失った首飾りや腕輪と共に落ち、血の
    海へと沈んでいく。人々の嘆きの声がこだまし、都中に響
    き渡って、大きなうねりとなってあなたを責めているわ。
    誇り高いメシカの民を滅亡に追いやった王として、みな、
    あなたを恨んでいる。神にさからったあなたの愚かさを、
    後世の人々もあざ笑うでしょう。
    今なら、そう、今なら間に合う。あなたと、あなたの民を
    不幸な運命に導かないで」
黒曜石「やめろ、なんて不吉なことを言うんだ」
蜂鳥 「たわごとだと思うなら、その女に聞いてみるといい。私の
    言うことが間違っているかどうかを」
黒曜石「大神官。一体こいつは何者です?」
大神官「……」
蜂鳥 「答えられないのね。でも、黒耀石。あなたは私を信じはじ
    めている」
黒曜石「何のために、そんな呪いを吐き散らす」
蜂鳥 「呪いではないわ。私は、あなたを生んだ人を知っているの
    よ」
黒曜石「母は、ずっと前に死んだ。おまえの言うことはすべて嘘だ」
蜂鳥 「嘘じゃない。彼女の小さな息子が不幸になるのは見たくな
    い。王の責任を放棄することで、あなたは王の務めを果た
    すことになる。早く、逃げなさい」
黒曜石「わかったぞ。おまえは、石英王子とぐるだな。兄上は、王
    位に執着しているのか。そんなにほしいならくれてやると
    言いたいところだが、そうはいかない。私はすでに王だ。
    王として生きながらえるのが、私の使命だ」
蜂鳥 「もうすぐ蜂鳥が目を覚ます。さようなら、黒耀石。運命か
    ら逃れられることを祈ります」

     黒耀石、蜂鳥を殺そうとしてとめられる。

大神官「おやめください」
黒曜石「なぜだ。おまえもたぶらかされているな」
大神官「いいえ。あれは蜂鳥ではありませんでした」
黒曜石「誰だと言うんだ」
大神官「若いころ、神殿でともに修行した娘です。予言の才があり、
    星を見ることに優れていました。あの者の予言は外れたこ
    とがありません」
黒曜石「なぜわかる」
大神官「初めて会った時、彼女は私に言いました。
    では、あなたが私を殺すのね、と。私は見習いとして神殿
    にあがったばかりで、いきなり出会った娘にそう言われて、
    びっくりしました。けれど、その事はいつの間にか忘れて
    いました。思い出したのは、彼女を殺す役目を命じられた
    時……そして、死んだ娘の腹から、子供を取り出した時で
    す。蜂鳥は、私をまっすぐに見て笑いました。あれは、蜂
    鳥の母親です。
    彼女には力がありました。本来なら、今の私の地位にいる
    のは、彼女だったでしょう」
黒曜石「予言は実現するんだな」
大神官「……」
黒曜石「最後まで私についてきてくれますか」

     大神官、黙って礼をする。
     黒耀石、去る。

大神官「私はまた、あなたを殺さなければならないのかしら?」
蜂鳥 「いいえ、二度も殺されたりしないわ」
大神官「私にはできない」
蜂鳥 「昔のあなたなら、迷わず刺してた」
大神官「そうかもね」
蜂鳥 「こんなことを言うとおかしいかもしれないけど、幸運をお
    祈りします。さようなら」
大神官「行ってしまうの」

     蜂鳥、去る。

大神官「行ってしまった」

     (溶暗)

石英 「誰かいるのか?」
黒曜石「ここは、がらんとしてさびしい所ですね、兄上」
石英 「みんな、野蛮人どもが押し寄せてくるというので、逃げ出
    していった。もう誰も残っていない。何をしに来た」
黒曜石「弟が、会いに来てはいけないのですか?」
石英 「いいや、悪くはない」
黒曜石「こちらも、人が少なくなってきました。心から忠実な者以
    外は、どんどん他部族の王のもとへと寝返っていくんです」
石英 「これだけ勝ち目のないいくさなら、俺だってそうする」
黒曜石「……」
石英 「おまえがただの神官見習いなら、さっさと逃げ出すよう、
    すすめるところだ」
黒曜石「ありがとうございます」
石英 「俺はどうしたらいいんだ?」
黒曜石「お好きなように」
石英 「王を殺したのは俺じゃない」
黒曜石「そうですか」
石英 「そうなんだよ」
黒曜石「どちらでもかまいません」
石英 「殺したと思われたくない」
黒曜石「兄上は、そんなことはなさいません」
石英 「当たり前だ」
黒曜石「これから、どちらへ行かれますか?」
石英 「西へ行こうかと思っている」
黒曜石「北の方が安全かもしれません」
石英 「おまえはここにいるんだな」
黒曜石「わかりきったことを」

     蜂鳥がやってくる。

黒曜石「釈放されて、自由の身です。どこへなりと、行ってしまっ
    て下さい」
石英 「また、会えるな」
黒曜石「私はそうは思いません、兄上」

     (溶暗)


《6》物語のむすび

蜂鳥 「テノチティトランが陥落した夜、私の中にいるメシカ族の
    祖先たちは、いっせいに嘆き、叫び、怒りの声をあげた。
    その声は、実際にテノチティトランに響き渡ったものと、
    寸分違わなかっただろう。そして、メシカ族でない祖先も、
    同じように泣き叫んだ。テスココ族も、トラテロルコ族も、
    チョルーラ族も、あの裏切り者のトラスカラ族でさえも。
    私たちは知っていた。この日、メシカの神々が死んだこと
    を。そして、それだけでは終わらないことを。テノチティ
    トランの滅亡は、始まりに過ぎない」

     石英が現れる。(手にナイフを持っている)

石英 「雨の神の神殿はすっかり燃えてしまっていた。まだくすぶっ
    ている焼け跡に、神官たちの死体がいくつも転がっていた。
    大神官は、門のすぐそばに倒れていた。いつも身につけて
    いた飾りは、すべてなくなっていた。でも、顔が分かるだ
    け、まだましな死に方だったかもしれない。
    弟は木に吊るされ、足を火にあぶられていた。黄金のあり
    かを言わなかったために。黄金など、どこにもありはしな
    いと言うのに。奴らは信じなかった。王を拷問にかけ、名
    誉を奪って、財宝のありかを言わせようとしたのだ」

     蜂鳥、聴き入っている。

石英 「あいつは、俺のことが分からなくなっていた。俺もあいつ
    が分からなかった。美しかった顔も、手足も、もう生きた
    人間のものとは思えないくらい、痛め付けられていたんだ」
蜂鳥 「黒耀石に会ったのね」
石英 「会ったよ」
蜂鳥 「テノチティトラン最後の王ね。民の恨みは、王に向けられ
    ている」
石英 「まわりの奴らはどこかに行ってしまった。あいつは、一人
    ぼっちだったんだ。
    あいつは、この世のすべての人間に対して、面目を失った。
    でも、そうなることは分かりきっていたんだ。裏切り者た
    ちが野蛮人と手を結んだ時点で、勝ち目のないいくさだと、
    分かっていたんだ。なのに、あいつはばか正直に恥をかく
    ほうを選んだ」
蜂鳥 「いいえ、あの人が王に選ばれた段階では分からなかった。
    王子、やめて。あとになって、ああすればよかったとか、
    こうすればどうなったんだろうとか、考えてもしょうがな
    いのよ」
石英 「俺は、弟を宮殿から盗み出した。軽い体をかついで、雨の
    神の神殿まで走って行った。神殿の階段のてっぺんまで登っ
    た。弟はもう口がきけなかった。でも、言いたいことはわ
    かった。俺はあいつの言うとおりにした。あいつの名と同
    じ黒耀石のナイフをつきたてて、いけにえの儀式を行った
    んだ。誰も知らなくても、俺は知っているし、神もごらん
    になった。黒耀石は王になり、神に捧げられて生をまっと
    うしたんだ。名誉は保たれる」
蜂鳥 「……」
石英 「おまえは、こうなることを知っていたんだな?」
蜂鳥 「はい」

     石英、蜂鳥を乱暴に引き寄せて、ナイフを突きつける。

石英 「なぜ止めなかった」

     蜂鳥、答えられない。
     石英、不意に気を静めて、謝罪の意を示す。
     石英、去る。

蜂鳥 「この地のすべての神々は、死に絶えることだろう。子供た
    ちはもはや、神々の姿を目にすることはない。ゆるやかな
    滅びが訪れる。私たちは知っていた。テノチティトランの
    滅亡は、我らすべての滅亡にほかならないのだと。
    今、彼らは私の中で静かに眠りにつこうとしている。私は
    彼らの間をそっと歩く。彼らは永久に静かに立っているだ
    け。私に気づくことは、もうないのだ。もちろん、私に話
    しかけることもない。
    雨の花は、私にこう言った。
    ……それでも、私たちは生き延びる。繰り返し、姿を変え
    て、よみがえるだろう」


                         (おわり)



※この作品を執筆するにあたって、次の文献等を参考にしました。


 『インディオの挽歌―アステカから見たメキシコ征服史』
  ミゲル・レオン=ポルティーヤ編、山崎眞次訳
  (成文堂)

 『滅びの符合―太陽の帝国アステカの終焉』
  ジュマーク・ハイウォーター著、金原瑞人・渡邉了介共訳
  (ベネッセ)

 『アステカ王国─文明の死と再生』
  セルジュ・グリュジンスキ著、落合一泰監修、齊藤晃訳
  (創元社)

 『アステカ文明の謎 いけにえの祭り』
  高山智博
  (講談社現代新書)

 『マヤとアステカ』
  吉野三郎
  (現代教養文庫)

 『アンソロジー新世界の挑戦9 神々とのたたかいT』
  篠原愛人・染田秀雄共訳
  (岩波書店)

 『アンソロジー新世界の挑戦10 神々とのたたかいU』
  青木康征訳
  (岩波書店)


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(以降の文章は著作権表示なので、印刷する場合もコピーする場合
も、その他いかなる形式における複製においても、削除は禁止しま
す)

この脚本は、日本の著作権法および国際著作権条約によって保護さ
れています。「アステカの少女」は山本真紀の著作物であり、その
著作権は作者である山本真紀に帰属するものです。

この脚本を全部あるいは一部を無断で複製したり、無断で複製物を
配布することは、固く禁じます。例外として、ダウンロードした本
人が所属するサークルあるいは劇団内で閲覧するための複製のみ、
次の二点が満たされていることを条件に、認めます。

 一、タイトル(『アステカの少女』 作・山本真紀)から最終行
   の英文コピーライト表示までが全て含まれていること。
 二、テキストを一切改変しないこと。

上演を行う際には、事前に必ず作者の許可を得る事が必要です。問
い合わせは、作者の主宰する「劇団空中サーカス」へどうぞ。

 「劇団空中サーカス」公式サイト http://www.k-circus.com/

上演許可の申請は、出来るだけ早めに行って下さい。この脚本の使
用料は、無料公演・有料公演といった公演形態に関係なく、申請時
期によって変わります。予算の関係で減額してほしい場合は、ご相
談下さい。

 一、公演初日より三週間以上前に、許可申請がされた場合。
   ・・・五千円。

 二、それ以降(事後承諾含む)の場合。
   ・・・一万円。

上演のための改変は、作者が上演許可を出した公演においてのみ、
認めます。ただし、原型をとどめないほどの改変はご遠慮下さい。
どこまで手を加えたら良いのか分からない場合は、作者あるいは劇
団までお問い合わせ下さい。
なお、改変された脚本の著作権も作者のものとし、改変者には何ら
権利が与えられないものとします。


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